2019年5月4日土曜日

価値主義の時代と「働き方」のこれから

仕事にやりがいを求める時代


先日、50に差し掛かったところで思い切って個人事業主になった前職の上司と
久しぶりに食事する機会がありました。
Aさん(仮名)さんは、組織に属して仕事していた時よりも
やりたいことが出来ると言っていました。

Aさんの場合、新サービスの企画から実行までの仕事、
特に社内では部署間の調整が最も必要な仕事を任されていましたので、
その事業に関する知識は勿論のこと社外とのネットワークをしっかりと
構築されていたため、同じような事業で課題を抱える会社から
助言や社内教育、セミナーの講師などの依頼があり、
協力を求める企業と自由に縦横無尽に仕事ができるようになったわけです。

前著「キャリアシフトで人生をかえる。」でも紹介しましたが、
経産省の若手官僚らがまとめた働き方の「昭和モデル」が崩壊して、
以前のように同じ会社に定年まで勤めあげて
60、65から年金暮らしという人々は全体の約3割というレポートがあります。

仕事に対して「安定」ですとか「高収入」を求める代わりに
「やりがい」と「ライフスタイル」のほうを求める時代になってきたのだと思います。

「お金2.0」の話


確かに「お金」の話は無視できません。
ただ「〇〇で幾ら稼げた」みたいな話を聴いたり、
読んだりしても全くピンとこないのではないでしょうか。
楽してネットで稼ぐ方法を教えますみたいな宣伝が
SNSでも飛び交っていますが、それを広めてしまえば
特別な知識ではなくなるわけですし、
結局のところそれが自分のやりたいことでなければ、
やりたくない仕事をいやいやする会社員と変わりはありません。

確かに企業だけではなく、個人でも充分に稼げるツールは増えましたが、
これらを何のためにどう使うかは、使う側個々人のキャリアに対する思想や
生き方によるのだと思います。

今やキャリアに対する考え方、価値観には古いモデルが
適用できない時代なのは明らかです。

経済のルールもまた、お金の流通のみに着眼した「資本主義」から
目に見えない社会的意義のあること、
複数のグループが生み出したお金に換金される前の「価値」の流通に着眼した
「価値主義」の時代になっていると「お金2.0」の著者、佐藤航陽さんは言います。

今までメリットがあること、有用性のあることがお金につながっていたが、共感、楽しいことがファンを呼びその一部にお金の流れが付いてくるシステムに変わってきた。

Facebook、Twitter、Youtube、Instagramで自分自身の関心あることや
得意なことを発信するだけで共感するフォロワーを増やし、
これが新たなビジネスチャンスにつながり、
お金の流れが後からついてくるという話はよく耳にします。

ただ、SNSの世界であっても
見せ方、表現の仕方が皆さんのニーズを引き起こしたり、
面白かったりしなければフォロワーは増えないでしょうから、
誰でも人気になれるものではありません。

ここで強調したいのは、今までヒト、モノ、カネが集まる
会社組織でしかできなかったことが、個人でも簡単にカネもかからず
アウトプットする媒体やツールができてきたことです。
これらの媒体やツールを使うためのテクニックやどう伝えるかという
マーケティングや戦略思考も重要な要素ですが、
まずその前に自分は何を持っていて、何が提供できるか。
即ち、自分はこの社会でどんな価値があるかということに尽きます。

価値主義時代の「働き方」


前著の「キャリアシフトで人生をかえる。」でも述べましたが、
目に見えない資産、すなわち自己認識、多様なネットワーク、
そしてチャレンジ精神をどう育み、活かしていくかが、
お金を稼ぐこと以上に重要になってきました。
これは100年人生という健康寿命が延びたこと、
そしてビジネス環境の劇的変化に適応するために必要なことですが、
何のために自分が生きていくかは各自の手に委ねられる時代、
逆に言えば国や企業や宗教が伝統や文化、ビジョンやドグマで
人生が保証され、救済される時代ではとうになくなっているということです。

だからこそ各自が自身のキャリアに対して責任を持って、
進むべき方向性を見出す力を身につけなければなりません。
なぜなら、これからのキャリアでは個々人が提供できる「価値」、
人生において自身が追い求める「価値」=面白いこと、楽しいこと、
やりがいを主体にした働き方、ライフスタイルが、
「稼ぎ方」よりも重要視される「価値主義」の時代に突入したからです。

価値主義の時代では、今まで国や企業や宗教が形作ってくれていた「働き方」が、
これからは私たち一人ひとりが「働き方」を考え、選択する時代です。

今現在の働き方が、その先のキャリア=経験と知識の地層となり、
それが自身の生き方、ライフスタイルに意味を与える、
また、幸福感や共感という「価値」を生み出すのです。
ここでは、価値主義の時代にふさわしいキャリアについて
多様な視点から提案していきたいと思います。

References
佐藤航陽(2017), お金2.0新しい経済のルールと生き方,幻冬舎

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