2020年1月2日木曜日

消える仕事、これから生まれる仕事、今後のキャリアに必要なこと

技術革新とこれから仕事に必要なこと

私たち40代は、ちょうど社会人になりたての頃は、パソコンやインターネットが仕事のなかに入り込んできたところで、今までペーパーワークだったのが、デジタルで処理できるようになり、生産性を上げる便利なものとしてできることの幅を広げてくれました。これまでの技術革新は、どちらかというと情報処理に関するスピードや効率を上げてくれるツールでした。

人が主で従であったコンピューターやロボットが、AIやIoTを含むシステムによって我々が従となる機会が増えています。例えばレジ打ちの仕事もICタグにより値段は自動で集計され、支払いも自動、そこにいるのは自動レジをサポートする人のみという店舗も増えてきました。ユニクロやセルフのガソリンスタンド、コンビニやスーパーなどでこのような自動化の動きは高まっています。

労働市場の二極化

 技術革新によって消えていくであろう仕事群がどのようなものかを確率で示したオズボーンのレポートが有名ですが、今現実に目の前の仕事に齷齪している我々ミドル層にとっては何となく遠い先の絵空事のように見えているかもしれません。

そこでいくつか面白いデータをお見せしたいと思います。

 ひとつは、IT技術の普及とスキル別の雇用状態の変化についてですが、図1のようにOECD諸国における1995年から2015年のスキル別雇用者シェアの変化をみると、定型業務の多い中スキル層のシェアが減る一方で、低スキルと高スキルのシェアが増加するという「雇用の二極化」が起きていることがわかります。ここでいう高スキル、中スキル、低スキルの定義は下記に記す通り。

・低スキル…サービス・販売従事者、単純作業の従事者
・中スキル…事務補助員、技能工及び関連職業の従事者、設備・機械の運転・組立工
・高スキル…管理職、専門職、技師、准専門職
図1
このようにIT化により定型業務の雇用は減っている一方で売り子や肉体労働の仕事は引き続き高スキル層と同じく増加傾向にあります。ただドイツ、アメリカやOECD平均を見てみると低スキル層も高スキル層ほど増加していないことがわかります。また、日本は中スキル層の雇用シェアがOECD諸国に比べて未だに高いことがうかがえます。これはまだまだ事務系の仕事を我々人間が行っているということで、すでにIT化により自動化されているOECD他国より遅れをとっているとも言えます。

 私の仕事でも稟議や交通費精算などIT化されているものもありますが、いまだに契約書などは押印が必要な紙ベースですし、海外企業が取り入れている電子署名によるデジタル契約などに比べると多くのプロセスが必要ですし、昔の決済システムを電子でやっているだけのところもあり、これらに関わる中スキル従事者の多さはなるほど確かにあるなと納得できます。逆に考えれば、これらの維持管理にかかわるルーティン(今まで人による確認作業)が自動化されたときにご自分はどのような仕事をするのだろうと想像してみてはいかがでしょうか。

 例えば、翻訳する仕事ですが、最近の自動翻訳ソフトは非常に優れているため、すべてを翻訳する必要はなくなったと言われています。文脈により意訳が必要な部分を最終的に修正するポストエディターという仕事が増えているそうです。このように仕事の主はAIが行い、それをサポートする仕事も今後増えていくのでしょう。このような仕事を行うにしても、ITを使いこなせなければ、言語スキルだけでは仕事が成り立たないことになります。

今後求められるのはIT能力やコミュ力

 次に見ていただきたいデータは、今後企業が重視する能力についてです。図2は特に新技術活用に積極的な企業がどのような能力をより重視しているかを示すグラフです。ICTを活用している企業とそうでない企業の求めている能力について差分を%で比較したものですが、左側のプラスの部分がより求められている能力、すなわち、創造性、ITを使いこなす能力、マネジメント能力、ロジカルシンキングやコミュ力であり、多くの仕事人が今まで流儀を大切にしてきた営業力、接客スキルや定型業務を効率的に行う能力は、大して需要はないということです。
図2
これを見ていると例えばどのような業種でもある営業職は、専門知識や協調性、接客スキルなど社会的な立ち振る舞いみたいなものが重視されてきましたが、これからはITを使いこなし、創造性をもって新しい提案ができる、そして大きな課題を他部署、異業種とコラボしながら課題を解決していくオーガナイザーの役割のほうが重要ということになります。訪販やテレアポの時代は終わり、WEB広告やSNSなどのコンテンツマーケティングで顧客獲得のプロセスを自動化する時代には個々人の営業スキルもたいなものはあまり重要ではなくなるのかもしれません。

女性のITスキのも注目 

 最後に3つ目にお見せしたいデータは、図3になります。日本の女性の就業について特にITスキルを使いこなせていないという現実です。特に日本の女性雇用者の半分以上は非正社員として就業しており、定型業務に就くことが多いため、ITスキルを高度に使いこなす仕事に就けていないということです。男性はOECDの傾向線上にいるものの、女性雇用者についてはITを活用した問題解決能力の高い人びとがそれなりにいるにもかかわらず、仕事でITを使う頻度がOECD諸国では2番目に低く、これは女性が自身の能力(ITを使いこなす能力)を仕事で活用しきれていないことを示しています。
図3

今年の学び直しはITスキルから

 これからはIT能力がより重要視されるなか、女性が特に定型業務へ追いやられ、ITを使う機会が少なくなればなるほど、貴重なIT人材も育たず、AIによる自動化で定型業務が減ると同時に女性の雇用機会も急激に減ることが予想されます。特に女性のミドル層で今後のキャリアについてさらにステップアップを図りたい場合には、より高度なITスキルの習得は必須になってくるでしょう。

 IT人材の雇用機会に関しては、図4にあるように日本はまだまだ活用に関しては先進国のあいだでは非常に少なくポテンシャルが高いため、今後も新しい仕事の創出が見込める分野となるので、そこにテレワークや柔軟な働き方が導入されてくれば女性の進出もより見込めるでしょう。
図4

 前著「キャリアシフトで人生をかえる」で見えない資産をいかに増やしていくかをお話ししましたが、今回は2018年の公開された経済白書のなかに「人生100年時代の人材と働き方」というところでこれからのトレンドがわかりやすくデータで出ていましたので、そのなかから私たちミドル層が今後学び直しを行うにあたってどのようなシナリオを描いて考えたらよいかのひとつの見方として提案したいと思います。

References
図1~4出典:内閣府 平成30年度 「年次経済財政報告:今、Society 5.0 の経済へ」,
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/index_pdf.html

金子冴月「消える仕事、生まれる仕事 「職業」より個の力が鍵に」日経新聞社,2020.1.1

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